読書感想文

タイトル通り読書の感想です

すばる 2021年5月号 ハイドロサルファイト・ゴング

タイトルからして意味がわからない。
コンクというのは濃縮液のことらしい。たとえば、カルピスコンクというのは、水で薄める前のカルピスの原液のことである。
で、ハイドロサルファイトというのは、漂白剤のことである。連載の第十一回目なので、ひょっとしたら、第一回あたりにタイトルの意味が書いてあったのかもしれない。
入院前は、半地下の本がたくさんある部屋の固いベッドで寝ていた。だが、退院した今は、柔らかいベッド、かつ、本はカビの原因になるので、ダメだと言われた。妻と娘の部屋を使うことになる。
ただし、家庭内隔離状態。
分厚いマットレスが心地いい。GVHD、ドナーのリンパ球が患者の臓器を攻撃する症状。
吝嗇を押し付けたくない、それは、自分が押し付けられるのが嫌だから。人生の在り方まで感じさせる。
次に載っていた。鼠漂白、鼠駆除剤なのか。もっとも、それ自体が、何の比喩なのかわからないけど。
柔らかいベッドでぐっすり眠る。その柔らかさで昔の女を思い出す。十八歳の頃の京都の思い出。結婚がちらつき東京に逃げ帰るも、いまとなっては、惜しかった。
体調は良くなかったが、自宅なので精神的にはいい状態。
食べ物の制限は多く、温泉卵(は食べられる)をいろいろに作ってみる。それでもネットでジャンクな食べ物を閲覧してしまう。
世間は新型コロナで外出を控えるように、ということだが、こっちは、もっと前から、外出を控えている状態。
ただ、小説の取材をしている解離性同一性障害の方から自分を見限ったのでは、という非難のメールが来て苦慮してしまう。行ってあげたくても病気で外出もままならない。理解してもらうのが難しい。
代わりに解離性同一性障害の方のいろんな人格が助けに来てくれたらしい。(パルスオキシメーター、右手人差し指に装着するが左手薬指に嵌っていたのはそのためか)。入院中に助けたのに会いに来てくれない。
誕生日の三日後に肺の異常が見つかる。再び入院生活へ。
肺炎になっている。しかも、ウイルス由来ではないかもしれない。GVHD由来だったらまずいことになる。内視鏡検査。
大掛かりな検査の結果、やはりGVHD由来、いままでの抗生物質による治療は無駄だった。ステロイド剤の大量投与へ。
ステロイド剤の副作用で躁状態。原稿の仕事がはかどる。
副作用でムーンフェイス。再入院は半年に及ぶ。
肺炎による恐怖は尋常ではないことがわかった。
六人部屋へ。一人のベッドだけ頭が通路側になっていた。
理由はすぐに判った。ひどい睡眠時無呼吸症候群、鼾のためだった。
自分も睡眠時無呼吸症候群CPAPを装着してよくなった。
そこで、当の本人に睡眠時無呼吸症候群を指摘し、自分の経験も踏まえ、適切な治療を受けるように提案してみた。
まったく、会話が成り立たない。
当の本人は、鼾を咎められ続け、被害妄想に陥っていた。しばらくして、別の病室に移っていった。睡眠時無呼吸症候群を治療しているわけではないので、なんの解決にもなっていない。
Zさんのこと。12年間入院。定期的にきれいな女性が訪れてくる。ボランティアの女性、ただの善意で来てくれるだけ。自分のうちで死にたいから退院。長年の闘病による諦念。